ダンスの様々な可能性を探り、次世代を育成していくPOPPER、KITE
国内外、世代、職種も問わず様々な人々から支持されるダンサーKITE。日頃レッスンやコンテスト等の審査員を務め、海外バトルへのゲスト出場なども行う他、2021年から自身のアカデミー“Heart Roots Academy”を開講し、次世代の育成も行っている。イベントオーガナイズやメディア関係の仕事もしながら、ダンサーとしては珍しい一般企業や学校などへの講演会などでも活動。2児の父であり、家庭を持ちながらも様々な場所で活躍し、多くの挑戦を続けるKITEに自身のアカデミーについての話や普通のダンサーとは少し違った角度のアプローチをしている理由など、なかなか他では聞けない貴重な話をしてもらった。また、atmos pinkのコーデを身に纏ったKITEのダンス映像も撮影。1発撮りで撮影され、その瞬間、そこにしかないものを切り抜いた最高の動画が完成した。体から音を奏で、楽しみながら踊るKITEのダンスをぜひご覧あれ!
Q、ご自身主催のHeart Roots Academyについて教えてください。
「始めて3年目になりますね。POPをベースに頑張りたい若い世代を募り、僕のダンスレッスンはもちろん、ダンスカルチャーや歴史を伝えています。他にも、栄養学や英会話学習、今の時代に必要なSNSについてなど、様々なゲスト講師を招いて情報を提供し、受講生たちが自分でチョイスして学べる機会を設けています。それらを1年のカリキュラムを通じて学び、卒業時には自分で働きかけて動けるようになることを目指しているアカデミーです。特に年齢制限もなく、現在も小学校低学年くらいから60歳の方もいます。全部オンラインベースなので、全国北海道から沖縄までいますね。夏と卒業時に合宿があって、そこで交流ができます。本当に小さな専門学校みたいなイメージ。アカデミーは募集期間中にエントリーしてもらえれば誰でも参加できるので、興味がある方は資料HPやInstagramのアカウント等からぜひチェックしてもらいたいです。」
Heart Roots Academy 公式HP:https://www.hrajapan.com
Q、アカデミーに栄養学を取り入れた理由は?
「実は栄養学は株式会社ユーグレナさんと共同でやらせてもらっています。知り合いを通じてユーグレナの方と出会った当初に、“スポーツ選手に向けた栄養ドリンクのようなゼリー飲料をダンス界でも使って欲しい”とのことで仲良くなりました。その頃まだアカデミーはなかったのですが、アカデミーが始まり、その話をしたら『じゃあ何か一緒にやりましょう!』ということになり栄養学を取り入れました。ダンスシーンではあまり聞かない栄養学を基準として、次世代に目を向け、アスリートとしての食事などを理解した上で今後活躍していけるようなことを伝えていこうと。今はBBOYもオリンピックに入ってきているじゃないですか。そこに栄養学って当たり前に入ってきているので、コンディション含め肉体改造など強いメンタルやフィジカルを作るという意味で栄養学を僕のアカデミーには入れさせてもらっています。」

Q、ダンスとの出会いについて教えてください。
「学生時代は野球少年だったのですが、中学生からめちゃイケだとか、アーティストで言うとDA PUMPさんたちがTVに出てきて、仲間同士で真似することは当時からしていました。高校に入るとブレイクダンスやHIPHOPをやっている子たちに出会い、仲良くなりましたね。部活ではなかったですけど、昼休みに踊っているみたいな。『KITEもやろう!』と誘われて、一緒に踊ったり、学祭で一緒に踊ったりしてダンスに触れていきました。その友達から、『RAVE2001』などのダンス番組のビデオを借りて、そこから当時のダンスシーンを知りました。本腰は野球だったのですが、甲子園には行けず、肩の故障もあり、大学受験シーズンに今後どうしようかと思っていた頃に公民館でダンスを始めて、RAVE2001で活躍していたNAMIさんが来るタイミングがあり、そのクラスを受けてHIPHOPってこういうものなんだとか、細かいこと、ジャンル的なことも知りました。卒業イベントの時に仲間のダンサーがイベントを主催しまして、その中に外国の人がいて、みんながワイワイ踊っている中に入ってガンガン踊っているんですよ。しかもめちゃくちゃ上手くて。そこで僕がちょっと踊れる特攻隊長みたいになって踊るわけです。僕も負けず嫌いなのでバチバチ踊って、そこで知り合ったやつが実は相方のMADOKAでした。当時見た目ほぼ外人だったのではじめは英語で話しかけたりして(笑)その後、日本人かい!ってなり、練習に誘われて受験勉強の合間に参加しました。そのまま地元の仲間とチームを組んで色々なイベントに出ていましたね。大学にも無事入って、野球よりもダンスをやるようになったのがダンスを本格的に始めたきっかけです。」
Q、ダンス人生の分岐点になった出来事を教えてください。
「僕の場合、両親がダンスをやることに対して大反対だったんですよね。親父はバリバリの商社マンで柔道をやっていた事もあり典型的な硬派な人でした。僕はダンスが楽しくなって、今後ダンスでやっていこうかなと話をした時にはもう大反対されて、両親と喧嘩。それも悔しくて見返してやると思えたので色々なコンテストに挑戦して、名前を残すようになるとちょっとお仕事がもらえるようになり、そこからBENNIE Kさんの全国ツアーにお声がけいただきました。でもツアーなので結構な期間各地を回るんですね。それがちょうど僕は大学の卒論のタイミングでした。チームメイトにも相談すると、彼らは大学に行っていなかったので“ダンスだけで勝負したい、このチャンスを逃したくない。”と。でも僕は“大学を卒業しないと殺される”と(笑)仲間はこんなチャンスは巡ってこないと話をするわけですよ。他の友達に相談しても『そんな話滅多にないし逃すわけにはいかないんじゃない?』と言われて、振り切りました。大学は休学もできるし、歳を取っても行けるのだからと。教師課程をとっていて、教育実習にも行っていたので、あとは卒業だというところでそれを蹴って、ダンス1本にしたそのタイミングが大きな自分の人生の分岐点ですね。その後ツアーに出てから知名度が上がって、テレビ番組『スーパーチャンプル』出演など、いい方向に転がっていきましたね。僕らも“できることなんでもやります”みたいなハングリー精神でやっていました。」

Q、世界で戦えるダンサーになるために必要なことはなんだと思いますか?
「僕のアカデミーでもすごく言っているのは、コミュニケーション能力ですね。英語、語学の能力もまずないと厳しい。僕が海外で1番痛感したのは、海外で何かに参加しても何を言っているのかわからないと十分な準備もできないということ。当日のスケジュールや急な変更アナウンスあった時も、英語がわからないからとりあえず待っていて、今やるのかなとかエンジンをずっとかけておかないといけなくなる。そんなの疲れてしまいますよね。そういう意味で1番必要なのはコミュニケーションが取れる力。ダンスの技術はもちろんですけど、海外で活動するのに語学は必要かなと思います。まずは国入れないといけないですしね。税関とか、パスポートのタイミングで話せないと止められてしまうので。あとは仕事もらった時にコミュニケーション能力があると次に繋がります。ないとその1回で終わってしまうので、そういう意味でもすごく大事だと思いますね。基本英語がどの国でも基準なので英語はできた方が良いと思います。」
Q、多くのバトルやコンテストで結果を残してきていると思いますが、日々どんなトレーニングを行なっていますか?
「若い時、時間があるときはひたすら毎日練習していましたね。安田ビルで深夜から朝まで踊っていました。その頃は友達と遊ぶ延長でやっていたからできたのもあるでしょうけど。今は逆に年齢もライフスタイルありますし、限られた時間でどう練習するかというような考えになってきています。一番大事にしているのはイメージトレーニング。フィジカルももちろん大事なのですが、自分の頭の中で整理して、それを練習できる時間で整えていくみたいな感じでやっていますね。」
※安田ビル:新宿にあったダンサーの踊り場。ビルの窓に写る姿を見て、多くのダンサーがダンスを練習する。ダンサー達の交流の場所でもあった。現在はございません。


Q、自治体や会社などダンスとは少し異なる業界への講演会も多く経験があるかと思いますが、そういった場所でダンサーの経験や話が求められている理由はなんだと思いますか?
「僕も講演会を初めてやった時は自分の話を誰が聞きたいのかなと思っていました。でも僕にはお医者さんをやっている昔の生徒でマネージメントみたいなことをしてくれる方がいて、僕が30歳を超えた時くらいにアドバイスしてくれたんですよ。その方もダンサーが歳を重ねた時に苦しんでいくところを見て何かしらサポートしたいとのことで、一緒に何かやらないかと声をかけてくれて、その提案が“経験を生かした話で講演会をすること”でした。僕も不安だったのですが、やってみると聞き手は自分のフィルターで聞いてくれるんですよ。ダンスの話でどう大会に向けて調整していくかなどの話をしていくのですが、それがビジネス系の人からするとプレゼンに向けての準備とかメンタルの持っていき方、どう緊張せずにベストを出すかの参考になるらしく。僕は失敗の方が多いので、海外でのそういう失敗談とかが、意外とこれから海外での挑戦を意識する人たちにとっての準備となる情報みたいで。それが聞き手にとってプラスになっているらしいです。僕もまだ不思議です(笑)。ビジネスだとそのビジネスに合った国とでしかコミュニケーションがないですけど、ダンスってどの国にでもある。だからそういう意味で国の問題を超えたところでコミュニケーションを取れるので、境界線が本当にないんですよね。そこがすごい自分の中では幸せというか、ダンスって素晴らしいなって思っている部分ですね。そこで経験してきたことが逆にいうと普通の人たちでは経験できないことだと思っています。それ以外でもオーガナイザーが来ないとか、イベントが途中で終わってしまってオーガナイザーもいなくなりあとは自分でなんとかしろとか。そういう最低ラインの経験も伝えられるし、逆に最高のラインもあったりする。なので、自分の今まで経験してきたことが旅行にしても、アスリートとしても、ビジネスの方でも使える情報だというのが講演会をやりながら気付けてきているなという感じです。」
Q、休日はどのようにして過ごしていますか?リラクゼーションの仕方などがあれば教えてください。
「休みはないです(笑)。急な休みとか出来る時は家の片付けとかしちゃいますね。でもリラックスっていう面で考えると僕は普段からリラックスしている部分はあって、福島とかにも月に2回教えに行っているんですけど、その移動の2時間がリラックスの時間だったり、普段のレッスンの行き帰りの時間も結構リラックスしているので、無理にリラックスの時間を作らなくても良いというか。昔からそうやってきているので、今がむしろ時間があるように感じています。若い時はとりあえずなんかいつも色々やっていて1週間に16本レッスンとかやっていたのでそれを考えたら今はいくらでも時間がありますね。あとは最近マイクロブタを飼い始めて、それは癒しですね。できることならずっと遊んでいたいです。」

Q、今後の展望を教えてください。
「もちろんダンスは挑む、プレイヤーで限界が来るまでやるって決めているのですが、他でいうと今は次世代の育成ですかね。アカデミーもやっているので、今後は世界に広げていきたいです。あとは講演会っていうアプローチを始めた理由の1つがダンサーの違った現場を作りたかったんですよ。特に僕らの先輩とか、今後ダンスができなくなる人へセカンドキャリアとして活動できる部分を探していました。それで講演会も始めて、自分が体験することで、システムがわかってどういう風に準備してどういう現場でやって、交渉するかなどのノウハウがわかるので、それができたらパッケージを先輩へ振って成立するなと思いました。そういう意味で今は自分が経験している状態、土台作りですね。僕だけがその現場でやれればいい話ではなく、色々な経験をしている人たち、特に先輩なんか様々な時代を経てやってきていますから、そういう人たちに登壇してもらって話してもらいたい。僕らが先輩たちに引っ張ってきてもらっていたので、それをもっとダンサーだけでなく若くて可能性がある子たちに伝えて欲しいなという想いです。アスリートはよくある話ですけど、ダンサーで講演会ってあまり無いと思うのでそこを確立できたら良いかなと思っています。」
多くのダンサーがまだ見出せていない新しい地にも挑戦し、今後のダンスシーンについても深く考えるKITE。プレイヤーとしての彼の活躍はもちろん、今後どんなダンサーが彼の元から輩出されるのか。そしてダンサーとしての新しいキャリアが生まれていくのか注目しいきたい。

Talk about stylng
「持ったときにすぐわかったんですが、すごく軽くて、着ても動きやすいし、サイズ感も僕には合っていました。デザインはもちろん、生地もよかったです。僕らがストリート感で服を探すと無理しているHIPHOPの人みたいになりがちなのですが、それよりもカジュアルでヤンチャすぎずストリートの遊びもあるコーデで新鮮でした。」

Talk about sneakers
「包み込まれる感じが最高ですね。靴によっては足が靴の中で暴れてしまって踊りにくかったりするのですが、ジョーダン自体が考えられていて昔から変わらないデザイン感があると思うんです。靴底は平なんですが踏むことでクッション感があって動いていても、しっかりサポートしてくれる感じがいいなと思いますね。今回履いたのはシンプルなデザインなのですが、それがまた良くって、すごく刺さるなと思いました。」
着用モデル
ジョーダン ブランド エア ジョーダン 1 LOW 85
fb9933-100
税込 ¥25,300
https://www.atmos-pink.com/item/jordanbrand/fb9933-100

KITE Profile
政井 海人 (まさい かいと) 40歳
プロフェッショナルダンサー、合同会社アボガドゥ社長、子供地球基金講師
ダンサーNAME: KITE
生年月日: 1983年 3月 26日
ダンス暦: 20年
スタイル: POP
所属チーム:フォーマーアクション、FAB5BOOGzALLSTARz
現在プロフェッショナルダンサーとして活動し、国内では大会への参加、イベントなどでのパフォーマンス、全国各地のスタジオでのレッスン、そのスタジオでの発表会の演出、構成、生徒たちへの振り付け、アーティストやCMの振り付け、舞台などミュージカルでの振り付けや演出など多くの方面で活躍中。 2017年より講演会の活動も始め今までの経験を生かし多くの人に元気や勇気を与えている。
海外とも積極的に繋がりを持ち、現在一ヶ月もしくは二ヶ月に一度のペースで海外へワークショップやバトルの審査員、パフォーマーとして招待され参加、毎年のオフシーズンに は海外のダンスキャンプにインストラクターとして参加し多くの国でダンスを教え交流を持つ。
ダンスを通じ様々な人と触れ合い国内だけでなく海外との繋がりを広げ、日本と海外の架け橋となって今以上にダンスシーンに貢献することを目指し活動中。
STAFF CREDIT
Model: KITE
https://www.instagram.com/boogalookite/
Photo & Movie:REALY
https://www.instagram.com/realy_photo_osaka
Edit & text:megu
https://www.instagram.com/megu3_hanabi/
Production:bashment
https://www.instagram.com/bashment_inc/